出逢い
~前回のつづきです~
2013年末に飛行機で、故郷へ帰省した際の出来事です。
隣りにNikonの一眼レフを首から提げた青年が座りました。
厚手のハードカバーを真剣に読んでいます。
大学生か、社会人になったばかりでしょうか。
写真を学んでいて、しかもNikonファンである身としては
スルーするにはあまりに惜しいシチュエーション。
さんざん悩んだ末、機体が離陸した頃、思い切って声を掛けました。
彼は撮影目的で、鹿児島を今回初めて訪れたとのことでした。
柔らかい語り口に、育ちのよさを感じさせます。
「いやあ…ほんとうにすてきな街ですね。またぜひ行きたいと思いました」
30分以上、ふたりでカメラの話に熱中しました。
あまりに楽しかったので、連絡先を書いたメモを渡しました。
彼は「ありがとうございます」と言いながら読みかけの本に挟んで、
読書へと戻っていきました。
ふと、彼の読んでいる本に目が行きました。
『ビジョナリー・カンパニー』と書かれていました。
ビジネス書なのかな。
あまりビジネス書を読むことはないのだけど、
彼があまりに熱心に読んでいる様子なので、妙に心に引っ掛かりました。
実際に読んで驚いたのですが、
このシリーズ(4冊出ている)は作を重ねるごとに
ビジネス書の枠を超えて、もはや哲学書の域に達しています。
偉大な企業が保持し、そうとは言えない企業が持たないものを
膨大な(延べ6000年分!)データを分析して洗い出し、
「偉大になるためには何が大切なのか」、そのエッセンスをぐっと凝縮して描き出しています。
「企業=組織が人間によって構成されているがゆえに、
偉大な企業の持つエッセンスは、一個人にも適用することができる」
という考えのもとに書かれた最新作
が特におすすめです。
きっとこれから、繰り返し読み返し続け、棺の中でも読み返すことになるのでしょう。
私にとって、とても大切な一冊になりました。
その後、結局、彼から連絡が来ることはありませんでした。
だけど彼はきっと、この本に引き合わせてくれるために現れてくれたんだ。
勝手にそう思って、出逢いに感謝しています。