春
夫が今日外出で一緒にいられないからと、
昨日の午後、休みを取って連れ出してくれた。
初めて、氷川神社へ行ってきた。
夫は今年、なぜか寺社に魅かれるという。
初詣は築地波除神社、先週末は泉岳寺へ行ってきた。
氷川神社は、武蔵一ノ宮というだけあって、とてもりっぱなお社だった。
どれくらいの樹齢なのか、とても大きなクスノキがあって、
参拝客の女性(私より少し年上くらい)が
両手を当ててたたずんでいる。
「私もさわってみる」
女性が立ち去ったあと、そう言うと
「何も起こるわけないじゃない」
夫が呆れてこちらを見る。
手をのばして、幹にふれた。
寒さで凍えたからだがふっとほどけて、
これはなんだろう、あたたかい何かが、静かに流れはじめた。
「ほっとするよ」
けげんな夫に笑ってこたえる。
「そういうことか。パワースポットだね」
夫はしばらく、木と空を黙ってながめていた。
境内を歩いていると、梅の花が咲いていた。
泉岳寺にも、ほんの数輪、咲いていた。
今年は早く咲くのだろうか。
ひとりの部屋でこのエントリを書いている。
どこからか、ひばりの声がきこえてきた。
ふと外を見ると、遠くで渡り鳥がはばたいていた。
冬の出口が、見えてきたんだ。